マリオット盲点
「マリオット盲点」とは
マリオット盲点とは、視野のなかにある「唯一、見えない部分」のことです。
網膜にある「視神経乳頭」の部分には、網膜(視細胞)がないため、ここに映像をうつすことはできないのです。

網膜に何億個とある「視細胞」で変換された電気情報は、同じ網膜上に無数に走っている「神経線維」をとおって、最終的に「視神経乳頭」の部分に集められます。つまり、視神経乳頭は、外界からの映像をうつすスクリーンではないわけです。
「視神経乳頭」で、すべての神経線維がたばねられ、1本の太いケーブル「視神経」となります。視神経には、脳に電気情報をおくる役目があります。
わたしたちが普段つかう「盲点」ということばは、この「マリオット盲点」からきています。
マリオット盲点は、「片目」になったとき、初めてその存在を確認できます。両目になると、ふしぎなことにマリオット盲点は姿を消してしまうのです。
その理由は、脳の両眼視機能が、片ほうの目にある「マリオット盲点」を、もう片ほうの目の映像を参考にして補ってしまうからです。
「マリオット盲点」の確認
マリオット盲点は、片目になってみることで確かめられます。
下のイラストで実験してみましょう。
マリオット盲点は、網膜の視神経乳頭に対応する部分。上のイラストのように、左右ふたつの目から出ている視神経は、内側にむかって交差します。
そして、交差しやすいように、視神経乳頭は、網膜の「やや鼻側」にあります。じつは、網膜に映る像は、水晶体の「凸レンズ」の作用によって反転します。そのため、視野の「やや耳寄り」に、「マリオット盲点」はあらわれます。

それでは、あなたの左目にある「マリオット盲点」を確認してみましょう。
まず、画面から40センチほど離れます。そして、左目だけでイラストを見ます。このとき視力検査の要領で、右目は手のひらでおおうだけにして、閉じないようにします。
この状態で、左目の正面に、「右の小さなグレーの点」がくるようにします。
左目の視線は実験中、「グレーの点」を見つめたままにし、動かさないようにします。そして、左目をこの「グレーの点」に固定しながらも、左側にある「ピンクの丸」を、なんとなくでも意識するようにします。
この状態で、少しずつ画面に近づいていきましょう。
どうですか?「ピンクの丸」が消える瞬間があるはずです。これが、あなたの「マリオット盲点」です。さらに近づくと、「マリオット盲点」のポイントから抜け出して、ふたたび「ピンクの丸」があらわれてくるはずです。
「マリオット盲点」と背景の修正
上の実験で、「ピンクの丸」が消えたとき、その部分が「白くぬりつぶされた」はずです。これは脳が、周囲の「背景色」を参考にして、擬似的につくりあげた色です。
下のイラストでも、同様に実験してみましょう。

今度は、「ピンクの丸」が見えなくなったとき、その場所が、「背景と同じ色」に塗りつぶされたはずです。白ではなかったでしょう。
同様に、黒い背景では黒に、赤い背景では赤に塗りつぶされます。
脳は「両眼視機能」以前に、”片目だけでも”、映像の補完や修正を行なうことができるわけです。
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