内斜視
内斜視とは
内斜視とは、片方の目がある対象に視線を合わせているとき、もう片方の目は内寄り(鼻寄り)になって、同じ対象に視線が向かない目の症状です。
内斜視は、斜視全体の7割をしめています。

「調節性内斜視」と「乳児内斜視」
内斜視は、「調節性内斜視」と「乳児内斜視(=非調節性内斜視)」に分けることができます。
調節性内斜視は、強い遠視が原因で起こり、遠視用メガネをかければ、たいてい完治します。
いっぽう、乳児内斜視は、先天的な要因によるもので、かならず斜視の手術が必要になります。また、手術をしても弱視になることがあり、どちらかといえば深刻な症状です。
3歳くらいまでは、目の成長段階です。
この時期に内斜視になり、発見がおくれていると、目の成長がとまってしまいます。そうなると、弱視になる危険が高くなります。
また、内斜視の発見がおくれると、両目でものを見る機能(両眼視機能)が発達しなくなり、立体感や遠近感が育たなくなります。両眼視機能が発達しないと、将来の運動能力に影響してしまいます。
乳幼児の内斜視は、早期発見がポイントです。
自治体で行なっている「3歳児検診」を受けることをおすすめします。自治体によっては、「4歳児検診」の場合もあります。
調節性内斜視
調節性内斜視とは
調節性内斜視とは、乳幼児期に、「強い遠視」が原因となっておきる内斜視の一種です。
赤ちゃんは、ほとんどが遠視の状態です。
眼軸(角膜から網膜までの長さ)がみじかいため、遠視の眼球になっているのです。しかし、そのぶん、目の屈折力が強くなっています。つまり、弾力性のある水晶体と、強い毛様体筋によって、ごく近くにも焦点が合うようになっています。
しかし、まれに、遠視の状態が強すぎる赤ちゃんがいます。
こういった赤ちゃんは、遠くも近くもぼやけて見えます。ものを見ようとしない場合は、たしかに、遠くも近くもぼやけたままです。
ところが、遠くや近くものを、見ようという意識とともに「明視(めいし)」すると、たいへんな目の調節力が必要になってきます。そうなると、目の調節力を必要以上に使わなければならなくなり、内斜視になるのです。
調節性内斜視は、対象を明視することが前提のため、早い段階ではあらわれません。1歳以上になると発症し、2〜3歳で多く見られます。
なお、ものを明視しようとせず、ぼやけたままで見ている幼児は、屈折性弱視(遠視性弱視の一種)となるので、要注意です。
目の調節と遠視
目の調節とは、近くを見るときの目の働きです。
近くを見る目の調節のさいには、目にふたつの運動が起こります。
ひとつは、水晶体を厚くする運動。もうひとつは、目をよせる「寄り目」の運動です。
一般的に、遠視とは、遠くも近くも見づらい状態です。
しかし、若いうちは、強い調節力にものをいわせて、網膜上に焦点を移動させて見ている場合があります。そのため、遠くがよく見えると、いい目だと思われることになります。
しかし、実際は、遠くを見るときも、「近くを見るための調節力」を使っているのです。
遠視の人が、近くを見るときは、非常な調節力を必要とします。そのため、遠視は、眼精疲労をおこしやすい傾向があります。
遠視と寄り目
寄り目になることを「輻輳(ふくそう)」といいます。強い遠視では、どこを見ても、寄り目になります。
通常は、この輻輳は、近くを見るときだけに、おこります。しかし、強すぎる遠視の場合、網膜のうしろにある焦点を網膜上に移動させるために、遠くを見ているときでも、水晶体の調節と輻輳が起こるのです。
ふつう、遠くを見るときは「開散」といって、目が両側へひらいていきます。
ところが、幼児の段階の強すぎる遠視の場合、遠くを見るときも、目が寄り目(輻輳)になってしまいます。
こういう子が、近くを見た場合、どうなるでしょうか?
寄り目は、さらにひどくなります。わたしたちでも、パソコンの画面から手元の指に視線を移したときに、距離が近くなるため、少し寄り目になるでしょう。
強すぎる遠視が原因で、こういった目の使い方しかできない乳幼児は、目を動かす外眼筋のバランスがくずれてしまいます。鼻側の内直筋が強くなり、反対に、耳側の外直筋が伸びてしまうわけです。
その結果、内斜視になるのです。これが、目の調節不良が原因となっておきる「調節性内斜視」です。
近視と寄り目
大人でも、近視が原因となって寄り目になり、調節性内斜視になることがあります。メガネやコンタクトレンズを装用していて、きちんと矯正されていても、内斜視になるケースです。
こういう人は、几帳面で、文字をはっきりと見ようとして、目が緊張するのです。とくに、目の調節力がおとろえてくる30代以降に多くなります。視野もせまい傾向があります。
多少、ぼやけていたとしても、文字から情報を読み取ることが、ほんらいの目的です。しかし、文字の輪郭がはっきりしないと気がすまないのです。
こういう人は、近くを見るときに、必要以上の水晶体の調節力を発揮します。と同時に、つよい輻輳(ふくそう)をして、寄り目がきつくなるのです。
さらにすすむと、遠くに目をうつしても、寄り目で見るようになっていきます。
乳児内斜視
乳児内斜視とは
調節性内斜視に対して、強い遠視が原因ではないものを「乳児内斜視」といいます。「非調節性内斜視」ともいいます。
調節性内斜視が、生後の目の使い方が原因で起きる後天的なものにたいして、乳児内斜視は、うまれながらに内斜視になる因子をもっています。
そのため、乳児内斜視は、生後、早い段階で発生します。生後3ヶ月以内にあらわれることが、ほとんどです。
乳児の目は、一見、内斜視のようにみえるものです。これを、本当の斜視にたいして、「偽斜視(仮性内斜視)」といいます。
しかし、これは、乳児なら、どの子でも起きる現象で、心配いりません。
乳児内斜視は、深刻な面があるので、少しでも目の状態が気になる場合は、眼科を受診することをおすすめします。
乳児内斜視の治療法
乳児内斜視の治療法は、手術しかありません。
弱視になる確率は、調節性内斜視よりも、乳児内斜視のほうが高くなります。また、乳児内斜視は、手術を行なっても、斜視が残ってしまうことがあります。そのため、弱視になってしまうこともあります。
「調節性内斜視」と「乳児内斜視」の比較
調節性内斜視は、はじめは、内斜視の眼が右になったり、左になったりします(交代斜視)。また、つねに斜視になっているわけではなく、たまに斜視になります(間欠性内斜視)。
しかし、調節性内斜視がつづくと、だんだん、左右のどちらかの目だけに内斜視があらわれます(片眼斜視)。また、いつみても内斜視になります(恒常性内斜視)。
いっぽう、乳児内斜視の場合は、はじめから、左右どちらかが内よりになっています(片眼斜視)。また、いつ見ても、内斜視の状態であるとことが特徴です(恒常性内斜視)。
そのため、親がよく観察していれば、乳児内斜視は発見しやすいといえます。乳児内斜視は、重い傾向にあるので、弱視を引き起こさないためにも、早期発見がたいせつです。
当サイトでは、文章・画像のコピー、およびリライトは許可していません。
無断転載は「著作権侵害」にあたり、「10年以下の懲役、1000万円以下の罰金」が法律で定められています。