斜視の手術
斜視の手術とは
斜視の手術とは、眼球を動かしている外眼筋の長さをみじかくしたり、位置をつけかえたりして、両目が同じ方を向くようにする処置です。
斜視の手術は、眼球自体には、キズをつけないので大丈夫です。
大人の場合は、点眼麻酔で手術が行なわれます。しかし、斜視の程度が強い場合や、乳幼児の場合は、全身麻酔で手術が行なわれます。
全身麻酔の場合は、しばらく入院する必要があります。
斜視の手術は、一回で完治するケースは少ないようです。
手術によって、いったん目がまっすぐになっても、少しずつもとの位置に戻っていくことがあります。この場合は、斜視の再手術が行なわれます。斜視の手術では、「戻り」を計算して、「過矯正」することがあります。
乳幼児の場合、斜視があると、両目でものを見る両眼視機能が育たなくなります。しかし、脳の両眼視機能のほうに斜視をおこす原因があると、斜視の手術を行なっても、両眼視機能が改善されないことがあります。
斜視の手術が行なわれるケース
斜視の手術は、「調節性内斜視」以外のケースで、行なわれます。
調節性内斜視とは、乳幼児の強い遠視が原因となっておきる症状です。
これは、目の調節力を使いすぎて内斜視になっているので、遠視用メガネを装用すれば、たいてい治っていきます。
しかし、調節性内斜視以外の症状は、「眼筋まひ」もふくめて、「目の調節」以外の原因によって、両方の目の外眼筋のバランスがくずれています。
斜視眼が交互にかわる「交代斜視」や、たまにおきる「間欠性斜視」では、様子をみます。
しかし、斜視眼がどちらかの目に固定する「片眼斜視」や、つねに斜視である「恒常性斜視」に進行した場合、手術を検討することになります。
乳児の斜視の手術
乳児内斜視の手術
乳児内斜視の場合は、たいてい、斜視の手術が行なわれます。
乳幼児の斜視といえば、内斜視です。
乳幼児の内斜視には、「調節性内斜視」と「乳児内斜視」があります。
調節性内斜視は、前述したように、遠視が原因となる斜視です。
いっぽうの乳児内斜視は、うまれつき、斜視になる原因をもっています。
生後すぐは、外眼筋が未発達で、まだ目を動かせないため、斜視の有無はわかりません。しかし、生後3ヶ月くらいになると、発見できるようになります。
乳児内斜視だとわかると、両眼視機能の発達と、弱視の防止のために、早急に、斜視の手術が検討されます。
乳幼児の場合は、できるだけはやい時期に、両目でものを見る両眼視機能の発達をうながす必要があります。両眼視機能は、1歳でだいたいできあがり、6歳くらいで完成します。両眼視機能の発達のためには、小学校入学までに、斜視の手術を行なうべきです。
また、乳幼児が、斜視のために片目を使わないでいると、その目の視機能が発達しなくなり、弱視になってしまいます。弱視は、3歳くらいまでに、対策をとれば、治る確率が高くなります。
そのため、乳幼児の場合は、たいてい手術という選択がとられます。
乳幼児の斜視手術は賛否両論
乳幼児期の斜視の手術には、賛否両論があります。
乳児の目は、成長とともに、内斜視から外斜視の方向へと変化していきます。このため、乳児の時期に、内斜視を手術すると、将来、外斜視をまねく心配があります。
また、乳幼児の時期に、正確な斜視角の計測はむずかしいものです。
このため、正確な手術も困難になります。
乳幼児の場合は、目の位置の補正だけではなく、両眼視機能の発達、弱視の防止のためにも、斜視の手術を積極的に行ないます。
ただし、脳の両眼視機能のほうに異常があった場合、いくら斜視の手術をしても、両眼視機能が育たないことがあります。
結局、乳幼児の弱視をふせぐという一点のためにも、斜視の手術を行なうべきではないでしょうか。
斜視の手術の実際
前転法と後転法
斜視の手術には、前転法と後転法があります。
前転法とは、伸びきってしまったほうの外眼筋を、みじかく切り、眼球の前方に付けかえる方法です。
後転法とは、強くひっぱっているほうの外眼筋を、いったん眼球から切りはなし、眼球の後方に付けかえる方法です。

斜視の手術は、つねに斜視眼が現れているほうの目の外眼筋にたいして行なうこともあります。また、斜視眼のないほうの目に行なうこともあります。
斜視は、両目の12本の外眼筋のバランスが原因だからです。
斜視の程度が軽い場合は、1本の外眼筋にたいして手術を行ないます。
しかし、場合によっては、1回の手術で、5本の外眼筋にたいして処置を行なうこともあります。
斜視の手術の注意点
- 乳幼児は全身麻酔。大人は点眼麻酔。
しかし、斜視の程度が強いと、痛むため、全身麻酔で行なわれる。 - 全身麻酔の場合は、前日の夜9時以降は、絶飲絶食。
- 手術後は、目に細菌が感染する危険がある。そのため、手術後2週間は、シャンプー、洗顔は禁止。
これは、白内障の手術などと一緒。手術前に、済ませておくことが大事。 - 手術中に痛みはない。しかし、手術後は目が痛むことがある。
その場合は、痛み止めが処方される。 - 白目を切るので、手術後は、目が真っ赤になる。
2〜3ヶ月もすれば、おさまる。 - 医者によっては、上下のまつ毛を切ってしまう。事前に確認する。
- 手術は、戻りを見越して、「過矯正」を行なうことがある。
たとえば、内斜視の場合は、過矯正を行なうと、外斜視ぎみになる。 - 一回で成功することは少なく、再手術を覚悟しておく。
たいてい1年後。
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