斜視の種類と分類
さまざまな斜視の分類
斜視の種類と分類法は、さまざまです。
■まず、斜視の目がどこを向いているかによって、分類できます。
「内斜視」、「外斜視」、「上斜視」、「下斜視」があります。
■つぎに、眼筋がまひしているのか、そうでないかで分類できます。
「麻痺性斜視」と「共同性斜視」があります。
■そのほか、斜視が左右の目で交代するかどうかで、分類できます。
「交代斜視」と「片眼斜視」があります。
■さらには、斜視がつねにあるのがどうかで、分類できます。
「恒常性斜視」と「間欠性斜視」があります。
■通常の斜視にたいして、「偽斜視」というものがあります。
■さいごに、斜視の一歩手前の症状である「斜位」もあります。
斜位は、厳密に言えば斜視ではありません。しかし、片眼が使われなくなると、斜視になることがあります。
斜視の見た目による分類
斜視は見た目によって、四つに分類できます。
片方の目が内側(鼻側)を向いている「内斜視」、外側(耳側)を向いている「外斜視」、上を向いている「上斜視」、下を向いている「下斜視」です。

斜視のほとんどは内斜視で、全体の7割をしめています。
外斜視は、年齢にかかわらず、みられます。大人に多い斜視です。
内斜視と外斜視がほとんどで、上斜視と下斜視は、まれな症状です。
内斜視は、さらに「調節性内斜視」と「非調節性内斜視」に分かれます。
外斜視は、さらに「間欠(歇)性外斜視」と「恒常性外斜視」に分かれます。

麻痺性斜視と共同性斜視
斜視の原因が眼筋の麻痺(まひ)によるのか、そうでないのかで分類できます。「麻痺(まひ)性斜視」と「共同性斜視」に分かれます。
まず、外眼筋のまひが原因でおきる斜視を、「麻痺性斜視」といいます。
外眼筋には6本の筋肉があります。そのどれかの筋肉がまひすると、その方向に目が動かなくなるのです。
麻痺性斜視になると、ある方向に目を向けたときだけ、斜視がきつくなります。ただし、このタイプの斜視は、まれです。
麻痺性斜視に対して、「共同性斜視」があります。ほとんどの斜視は、このタイプです。
交代斜視と片眼斜視
「交代斜視」と「片眼斜視」という分類もできます。
交代斜視とは、左右の目に、斜視が交代であらわれることです。
たとえば、乳幼児の遠視が原因となる「調節性内斜視」。この場合、はじめは、左右交代で内斜視があらわれます。右が寄り目だと思ったら、べつのときには、左が寄り目になっている、といったかんじです。
しかし、これがつづくと、つぎに説明する「片眼斜視」に移行していきます。
片眼斜視とは、文字通り、片目だけにあらわれる斜視です。
乳児内斜視の場合は、「交代」することはなく、つねに内斜視の状態、つまり片眼斜視です。そのため、注意していれば、発見しやすいともいえます。
眼筋がまひする「麻痺性斜視」も片側だけにおきるので、片眼斜視ということができます。
そのほか、ケガや病気などで視力が低下した場合や、不同視(がちゃ目)を放置した場合も、片眼斜視における「外斜視」になります。
乳幼児が片眼斜視になると、視機能の発達がさまたげられ、弱視になります。
恒常性斜視と間欠性斜視
「恒常性斜視」と「間欠(間歇)性斜視」という分けかたもできます。
恒常性斜視とは、つねに斜視があらわれている状態のことです。
このタイプの斜視は、いつ見ても、片側の目がずれています。
たとえば、遠視が原因の調節性内斜視は、ほうっておくと、交代斜視から片眼斜視に移行します。この場合、さらに、たまにあらわれる「間欠性斜視」から、つねにあらわれる「恒常性斜視」へと移行していきます。
乳児内斜視は、つねに斜視なので、恒常性斜視です。
乳幼児が、片眼斜視と同時に、恒常性斜視になると、視機能の発達がさまたげられるため、弱視になります。
そのほか、病気やケガなどで、視力が低下したために外斜視になった場合。この場合は、視力が回復しないかぎりは、斜視のままなので、恒常性(外)斜視といえるでしょう。
間欠性斜視とは、すこしふれたように、たまにあらわれる斜視のことです。
間欠性の外斜視は、寝起きや、疲れているとき、遠くを見たときなどに、あらわれます。
眼の輻輳(内によせるはたらき)の調節機能がよわいなどが原因となって、気をぬくと片目が外側を向いてしまい、間欠性外斜視となるのです。しかし、これは、誰でもなりうるもので、とくに手術もなく、心配のない症状です。
この間欠性斜視が進行し、恒常性斜視になる人もいます。
偽斜視
通常の斜視に対して、「偽斜視」ということがあります。「仮性内斜視」ともいいます。
偽斜視は、乳幼児に見られるもので、実際は斜視ではありません。
乳幼児は、左右の目の間隔がはなれています。また、鼻の根元が未発達です。さらに、乳幼児は、白目にたいする黒目の比率が大きくなっています。
こういった理由から、内斜視のように見えるのです。
成長とともに、目の間隔がせまくなり、鼻の根元も発達してきて、黒目の比率が小さくなってくると、正常に見えるようになります。
しかし、乳幼児の場合、ほんとうに内斜視の場合があります。
「乳児内斜視」です。ただ、乳児内斜視は、前述したように、「恒常性斜視」であり、「片眼斜視」であるので、注意深く見ていれば、わかるかもしれません。少しでも、おかしいとおもったら、眼科を受診しましょう。
斜位
斜位とは、眼の位置(眼位)がずれる傾向のことです。
斜位は、潜在的に斜視の因子をもっている症状です。しかし、ふだんは潜伏しており、めだった症状はあらわれてきません。
斜位は、ふだんは、斜視のように眼の位置がずれることはないので、両目でものを見る機能(両眼視機能)は正常に発達しています。
目の位置のずれが起きても、すぐに脳と外眼筋が、ただしい目の位置に調節するため、ふだんは、斜視の症状はあらわれません。
ただし、片目をふさいで、両眼視を抑制すると、眼位がずれ、斜視があらわれてきます。
同様の原理で、左右の目に、いちじるしい視力の差がある不同視(がちゃ目)の場合、弱いほうの目は使われなくなります。そのため、目をふさいだときのようになり、いいほうの目が斜視になることがあります。
当サイトでは、文章・画像のコピー、およびリライトは許可していません。
無断転載は「著作権侵害」にあたり、「10年以下の懲役、1000万円以下の罰金」が法律で定められています。