黄斑変性症の治療法

黄斑変性症の治療法とは
黄斑変性症には、現在、有効な治療法がありません。
とくに「萎縮型(いしゅくがた)」の黄斑変性症には、確実な治療法がない、というのが現状です。
いっぽう、新生血管ができる「滲出型(しんしゅつがた)」の黄斑変性症には、レーザー光凝固療法や外科手術という治療法があります。
しかし、視力にとって大事な「黄斑中心窩(おうはん・ちゅうしんか)」を傷つける危険があるため、思うように手術ができない場合が多いのです。
また、手術によって、新生血管を閉塞させたとしても、血管が再開することがあります。その場合は、何度も手術を行なう必要があります。
最近では、ルテインのサプリメントが黄斑変性症を予防し、進行をおくらせるのではないか、として期待されています。
萎縮型黄斑変性症の治療法
萎縮型黄斑変性症の治療法は、前述したように、有効な方法がありません。進行の経過を観察するくらいしかできないのです。
現在、萎縮型の進行を遅らせるのではないかといわれている「ビタミン剤」や「亜鉛」による薬物療法が行なわれています。
最近では、サプリメントのルテインが、萎縮型黄斑変性症に大変効果があるとして、注目されています。ルテインは、緑黄色野菜、とくに、ケール、ほうれん草、ブロッコリに多量にふくまれています。
ふだんから「緑黄色野菜」を多く食べる習慣のある人は、黄斑変性症にかかりにくいと考えられます。黄斑変性症になった場合でも、緑黄色野菜を多くとることで、進行を遅らせる効果が期待できます。
滲出型黄斑変性症の治療法(レーザー)
レーザー光凝固療法
新生血管が発生する「滲出型黄斑変性症」においては、黄斑部にレーザーを照射する「レーザー光凝固療法」が、まず最初に行なわれます。
この治療法は、体に負担がなく、外来で数十分で終えることができます。
新生血管は、老廃物を吸収するため、網膜色素上皮細胞に伸びてきます。また、酸素や栄養を送り届けるため、神経網膜のほうまで伸びていきます。
しかし、新生血管は破れやすいため、すぐに出血をおこします。

レーザー光凝固療法は、この新生血管をねらって照射し、焼き固めます。
これによって、出血やむくみが解消され、視力が回復することがあります。
ただし、新生血管が黄斑部の中心である「中心窩(ちゅうしんか)」からはなれていて、なおかつ小さい場合にのみ適用されます。
中心窩にレーザーを照射してしまうと、大事な箇所を傷つけてしまいます。
重大な視力低下を招いてしまうのです。このため、新生血管が中心窩におよんでいる場合は、レーザーによる治療法は行なわれません。
しかし、一見、中心窩に新生血管があるように見えても、新生血管が生じている起点が、中心窩以外にあることがあります。
この場合は、この起点の部分をレーザーで焼き固めます。
こうすれば、栄養を送っている、元の血管を閉塞させることができます。
中心窩あたりにまで伸びている新生血管を、「兵糧攻め」にすることができるのです。
光線力学的療法(PDT)
光線力学的療法(PDT)は、黄斑変性症の最新治療法です。
黄斑中心窩に新生血管がおよんでいる場合、レーザー光凝固療法を行なうことができません。この場合、光線力学的療法が行なわれます。
ただ、光線力学的療法では、新生血管を焼き固めるのではなく、血管の内皮細胞を破壊して、閉塞させるだけです。
そのため、ふたたび血管がひらくことがあります。
光線力学的療法は、黄斑変性症を完治させる治療法ではありません。
血管が開いたら、ふたたび治療を行なう、という継続的なものになります。
あくまで、黄斑変性症の進行をおくらせるためのものです。
そのため、光線力学的療法を行なう場合は、新生血管がふたたび開いていないか、3ヶ月に1回は、眼科で検査をうける必要があります。
光線力学的療法の実際
光線力学的療法(PDT)の実際を解説します。
まず、腕にある静脈の血管に、光に反応する「ビスダイン」という薬剤を注射します。つぎに、この薬剤が、網膜の黄斑部にある新生血管に来たときに、特殊な、弱めのレーザー光線を照射します。
すると、周囲の細胞を、ほとんど傷つけることなく、新生血管の内部にある「内皮細胞」のみを破壊することが出来ます。
レーザーに反応して、新生血管に達した薬剤が化学反応をおこし、活性酸素を発生させます。それが、内皮細胞に障害をあたえるのです。
注意点としては、治療後、しばらくは強い光にあたらないようにします。
薬剤が全身の血管をまわるため、全身の血管が酸化変性をおこす危険があるからです。
強い光をさけるために、治療のあとは、2日ほどの入院が必要になります。
また、退院したあとも、3日ほどは直射日光をさける必要があります。
滲出型黄斑変性症の治療法(外科手術)
新生血管抜去術
外科手術として、新生血管を取りのぞく「新生血管抜去術」という方法があります。しかし、「光線力学的療法」が行なわれるようになってから、ほとんど実施されなくなりました。
新生血管抜去術は、新生血管が、黄斑部の中心である「中心窩(ちゅうしんか)」にまでおよんでいる場合に、行なわれます。
まず、硝子体手術の要領で、強膜に穴をあけます。
それから、必要な器具を入れ、新生血管を取り除きます。
ただし、新生血管が網膜の深い部分にある場合は、行なわれません。
黄斑変性症の外科手術のさいには、2週間ほどの入院が必要になります。
また、手術後は、数日間、うつぶせの姿勢をとらなければなりません。
黄斑移動術
外科手術として、網膜の黄斑部(おうはんぶ)を移動させる「黄斑移動術」という方法があります。
この方法も、「新生血管抜去術」と同様に、あまり行なわれなくなりました。
新生血管が「中心窩(ちゅうしんか)」に来ている場合に、行なわれます。
黄斑移動術は、その名のとおり、網膜の黄斑中心窩をはがし、新生血管のないところに移動させます。そのあと、中心窩の部分にあった新生血管をレーザーで焼き固めたり、外科的に取り除きます。
副作用としては、黄斑部を移動するため、一時的に、ものがふたつに見えるという症状があらわれます。
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