動脈硬化と網膜

動脈硬化とは
動脈硬化とは、動脈が硬くなって弾力を失った状態です。
同時に、血管の通り道が狭くなり、血液の流れがわるくなります。
動脈硬化は、長年の生活習慣が原因。いきなり、なるわけではありません。
肥満やストレス、喫煙、運動不足などの生活習慣が積み重なると、血管の内側にコレステロールがたまって、通り道がせまくなります。
こうなると、血管の弾力が失われてくるため、血圧が上がってきます。
これが「高血圧」です。高血圧は、動脈硬化の入り口といえます。
たんなる高血圧の段階では、生活習慣を改善すれば、血圧も下がり、健康状態もよくなっていきます。
しかし、長年、高血圧を放置し、生活習慣を変えないでいると、動脈硬化を引き起こします。もちろん、”ここからが動脈硬化”という線引きはありません。
いったん、動脈硬化を引き起こすと、血管をもとにもどすことはできません。動脈硬化は他の病気を引き起こすまで、自覚症状がないものです。
動脈硬化になると、血のかたまり(血栓)ができます。
それが心臓にでると、狭心症や心筋梗塞、脳に出ると、脳卒中などとしてあらわれます。
網膜の動脈硬化
網膜には、非常に細かな毛細血管が、張りめぐらされています。
動脈硬化は、網膜の血管にも起こります。
これを「網膜血管硬化症」あるいは「網膜動脈硬化症」といいます。
全身に動脈硬化が起こると、網膜の毛細血管にも動脈硬化が発生します。そのため、眼底を検査して、全身の血管のようすや、動脈硬化の有無を判定することができます。
血管の健康状態をしらべるために、内科医が眼科医に、検査を依頼することがあるのはこのためです。
硬化をおこした動脈は、細くなります。色も赤ではなく、金属性の色をおびて「赤銅色」に見えます。さらに悪化すると、白っぽく見えるようになります。
網膜の血管は、弱い毛細血管であるため、動脈硬化や血流の影響を、まっさきにうけやすいといえます。
たとえば、高血圧がつづくと、毛細血管が圧力に耐えられなくなって、出血します。これを「高血圧性網膜症」といいます。
糖尿病になって、血液が粘着性をおびてくると、血流がとどこおるようになり、出血します。これを「糖尿病網膜症」といいます。
動脈硬化と網膜の病気
動脈硬化と動静脈
網膜では、動脈と静脈がいたるところで交差しています。

そのため、動脈硬化をおこすと、初期の段階では、硬くなった動脈が、隣接している静脈を圧迫します(動静脈交差現象)。
これにより、静脈の血流がわるくなり、静脈に血のかたまり(血栓)ができるのです。
この場合、眼球内の血液が外に出られなくなるため、眼底出血をおこします。これを「網膜静脈閉塞症」といいます。
網膜の動脈硬化がさらに進んでいくと、今度は動脈自体に血栓ができて、詰まるようになります。動脈は、眼球に酸素と栄養をおくるための血液。
そのため、動脈がつまると、網膜の細胞が死んで、いきなり視野が欠けたりします。これを「網膜動脈閉塞症」といいます。
動脈の本管が詰まってしまうと、数時間のうちに失明にいたってしまいます。
網膜静脈閉塞症
網膜静脈閉塞症は、網膜から受け取った老廃物を、眼球の外へと運び出す「静脈」がつまってしまう病気です。
出口がふさがれるため、網膜で出血をおこすようになります。
網膜静脈閉塞症は、ふたつに分けられます。
ひとつは、網膜にはりめぐらされている、枝分かれした静脈の部分がつまってしまう「網膜静脈分枝閉塞症」。もうひとつは、眼球を出た外にある、静脈の本管がつまってしまう「網膜中心静脈閉塞症」。
静脈の枝の一部がふさがると、その部分の静脈血のみが出血をおこします。この症状は自覚症状にとぼしく、糖尿病網膜症と似たような症状と経過をたどっていきます。
放置していると、新生血管が硝子体(しょうしたい)にも進出していきます。
静脈の本管がふさがると、網膜上のすべての静脈の出口がふさがれることになります。行き場をうしなった静脈血は、網膜に一気にあふれかえり、急激に視力が低下していきます。
この場合、もとの視力にもどらないことが多くなります。
網膜動脈閉塞症
網膜動脈閉塞症は、網膜に酸素や栄養を供給している「動脈」がつまってしまう病気です。そのため、供給を断たれた視細胞が死んでいき、視野が欠ける症状があらわれます。
網膜動脈閉塞症は、ふたつに分けられます。
ひとつは、網膜にはりめぐらされている、枝分かれした動脈の部分がつまってしまう「網膜動脈分枝閉塞症」。もうひとつは、眼球を出た外にある、動脈の本管がつまってしまう「網膜中心動脈閉塞症」。
網膜動脈閉塞症は、時間とのたたかいです。
視野が欠けたら、できるだけ早く処置を行なうことがたいせつです。
そうすれば、いったん欠けた視野でも、もとに戻る可能性があります。
動脈の本管がつまると、いきなり視界が真っ暗になります。
この場合、網膜に血液がまったく供給されなくなるので、さらに緊急の対応が必要になります。
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