中心性網膜炎
中心性網膜炎とは
中心性網膜炎(中心性網膜症)とは、視力にとって、もっともたいせつな黄斑部(おうはんぶ)がおかされる病気です。
この部分に水分がたまるため、網膜が浮いた状態になり、見え方に異常がおきるのです。
正式名称を、「中心性漿液性網脈絡膜症(ちゅうしんせい・しょうえきせい・もうみゃくらくまくしょう)」といいます。
中心性網膜炎は、軽い眼病です。
3ヶ月ほど、そのままにしておくだけで、しぜんに治ることがほとんどです。
眼科で診察をうけても、基本的にはなにもせず、様子をみます。
中心性網膜炎の原因は、過労やストレスといわれています。
ストレスを軽くし、無理をしないように改善すると、病気は快方にむかいます。
発症年齢は、30〜50歳の男性に多くなっています。
これ以外の年齢層には、あまり見られません。
中心性網膜炎の症状
中心性網膜炎の症状は、黄斑変性症とよくにています。
たいていは、片方の目からおこります。以下のような症状があらわれます。
- 中心暗点 ・・・ 視野の中心が暗く見える。中心の明度が落ちる。
- 変視症 ・・・ 視野の中心がゆがんでみえる。
- 小視症 ・・・ ものが小さく見える。左右の目で、ものの大きさが違う。
- 軽い視力の低下
- 軽い遠視
- 色覚の異常 ・・・ 色を正しく認識できない。
中心性網膜炎で失明することはありません。
ただし、中心性網膜炎は、黄斑変性症とよくにています。黄斑変性症は、場合によっては失明にいたることもある、危険な眼病です。
上記の症状があらわれたら、すぐに眼科を受診することがたいせつです。
中心性網膜炎のしくみ
中心性網膜炎が発生するしくみは、どうなっているのでしょうか?
まず、網膜は、「神経網膜」と「網膜色素上皮層」のふたつに分けられます。
「神経網膜」は、外界からの光を映すスクリーン。
光や色、形を認識する「視細胞」や、情報を運ぶ「神経線維」の集まりです。
同じ網膜ではあっても、「網膜色素上皮層」は、「仲介」の役割をします。
網膜の外側には、脈絡膜(みゃくらくまく)があります。脈絡膜には、動脈や静脈が無数にはりめぐらされています。

網膜色素上皮層は、脈絡膜からの酸素と栄養を、神経網膜に渡しています。同時に、神経網膜から排出された老廃物を、脈絡膜へと渡しているのです。
中心性網膜炎になると、ストレスなどが原因となって、仲介役の網膜色素上皮層に異常が発生します。そうすると、バリアの役目も果たす色素上皮層がやぶれ、脈絡膜から漿液(しょうえき)がもれだします。
この液体が、神経網膜と網膜色素上皮層の間にたまって、むくむのです。
そのため、神経網膜がもりあがり、視野の中心部に異常がおきるわけです。
中心性網膜炎の治療法
中心性網膜炎と診断されても、まずは経過観察をします。
とくに治療は行ないません。睡眠を充分にとり、ストレスをためないように心がけていれば、しぜんとよくなるものです。
しかし、なかには、症状が長引く場合や、いったん治ったものの再発をくりかえす場合があります。
このようなケースでは、視力の低下をまねく危険があるため、脈絡膜の血液循環をよくする「循環改善薬」や、視細胞を活性化させるための「ビタミン剤」を投与することがあります。
これによって、神経網膜の下にしみだした漿液(しょうえき)の吸収を、はやめることができます。
そのほか、レーザー光凝固療法を行なうこともあります。
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