糖尿病網膜症の原因
糖尿病網膜症の核心的原因は、「糖尿病」です。
そのうえで、なぜ糖尿病網膜症になるのかというと、目の血管は、弱い毛細血管だからです。そのため、出血をおこし、網膜が酸欠状態になっていきます。
こうなると、生体は「新生血管」をつくって対応しようとします。
この新生血管は増殖力が強く、このことが糖尿病網膜症をさらに進行させていく原因になります。
糖尿病が原因
糖尿病網膜症を発症する原因は、当然、「糖尿病」です。
ですから、糖尿病ではない人が、糖尿病網膜症にかかることはありません。
ただし、高血圧や動脈硬化がある人は、網膜の静脈が閉塞し、「網膜静脈分枝閉塞症」という、網膜症によく似た眼病にかかりやすくなります。
この病気は、網膜の酸欠から、新生血管が発生し、糖尿病網膜症と同様の経過をたどっていきます。
さて、糖尿病にかかると、なぜ、目の網膜に影響がおよぶのでしょうか?
それは、糖尿病は、全身の血管や神経に障害をおこす病気だからです。
眼底の網膜は、「毛細血管」という、非常にデリケートな血管の集まりです。毛細血管は、血管壁がうすく、通り道がせまくなっています。そのため、粘着性のある高血糖の影響を、まっさきに受けてしまうのです。
同様の理由で、毛細血管が多い腎臓に障害がおよぶと、「糖尿病性腎症」になります。
糖尿病とインスリン
糖尿病は、「インスリン」というホルモンがうまく分泌されなくなるか、作用が弱まる病気です。
インスリンは、食事からとりいれた血液中のブドウ糖を、体内の細胞にとりこませる働きがあります。ブドウ糖をエネルギーに変える手伝いをするのです。
インスリンのおかげで、私たちは体を動かすこともできるし、脳も働くのです。
ところが、「遺伝」や、栄養過多・運動不足といった「生活習慣」、「肥満」、「ウィルスの感染」によって、インスリンが作られなくなることがあります。
または、インスリンのはたらきが弱まったりします。
インスリンのはたらきが弱まると、糖が各細胞に送り届けられなくなります。
そうすると、糖の代謝がうまくいかなくなり、糖が血液中にあふれかえることになります。
その結果、高血糖になり、糖尿病になるのです。
網膜の血管は細く弱い
糖尿病になった場合、網膜の毛細血管がまっさきに、おかされます。
毛細血管は、ほかの血管よりも細く弱いことが原因です。
インスリンの働きが弱まるか、分泌されなくなると、血液中にブドウ糖があふれかえります。糖を多くふくんだ血液は、粘着性が高く、どろどろしています。
血液の粘着性が高いと、当然、血流がわるくなります。
毛細血管は、ほかの血管よりも細いため、粘着性が高くなると、まっさきに血行がわるくなるのです。
また、血液がどろどろしているということは、血が固まりやすいということ。
固まった血液は、通り道が狭い毛細血管では、とくに詰まりやすくなります。
さらに、糖を多くふくんだ血液は、血液内の脂肪分と結合します。
これによって、血管の壁が損傷をうけて、うすく、もろくなります。
毛細血管は、もともと、ほかの血管よりも血管壁がうすいため、そのダメージも大きいのです。
やがて、毛細血管がところどころ破れはじめ、点状の出血をくりかえします。
網膜が酸素不足に
網膜の血流がわるくなり、血管がもろくなった結果、点状に出血します。
これは網膜に、酸素と栄養が不足することを意味します。
酸素や栄養素が、網膜まで送られなくなると、網膜はダメージをうけます。
そのままでは、網膜の視細胞や神経繊維に悪影響がでることになります。
そこで、生体は、「新生血管」を臨時でつくって、応急処置をとります。
あたらしく血管を作って、網膜に酸素や栄養素を送り届けようとするのです。これ自体は、本来、ありがたいことです。
ただ、新生血管は臨時でつくられるため、非常にもろくできています。
すぐに破れて、出血をおこしてしまうのです。
新生血管が増殖
新生血管は増殖力がものすごく、新生血管をささえる「増殖膜」まで作って、ふえていきます。
このため、新生血管は、眼底の網膜だけではなく、眼球中央の透明な部分である「硝子体(しょうしたい)」にまで、のびていきます。
そして、硝子体内で出血をおこすようになります。

硝子体内で出血をおこすと、目の前にスミや雲が流れるように見えます。
外部からの光が、それらにさえぎられ、網膜上に影をおとすためです。
硝子体内での出血が広い範囲におよび、厚くなると、視界がさえぎられます。こうなると、視力がいちじるしく低下することになります。
さらに進行すると、新生血管は、毛様体や虹彩にまでのびていきます。
そこでも増殖膜をつくり、房水の排出口である隅角を圧迫します。
その結果、眼圧があがり、「血管新生緑内障」を引き起こすことになります。
当サイトでは、文章・画像のコピー、およびリライトは許可していません。
無断転載は「著作権侵害」にあたり、「10年以下の懲役、1000万円以下の罰金」が法律で定められています。