糖尿病と目の病気
糖尿病にかかると、網膜症だけでなく、さまざまな目の障害を引き起こします。以下のような眼病や症状を、発症する可能性があります。
- 糖尿病黄斑症
- 糖尿病性白内障
- 血管新生緑内障
- 角膜の知覚低下
- 眼筋まひ、眼瞼下垂(がんけんかすい)
糖尿病黄斑症
「糖尿病黄斑症」とは、糖尿病網膜症に併発しておきてくる眼病です。
末期の増殖網膜症の段階では、7割以上の人が、かかるといわれています。

しかし、初期の単純網膜症の段階でも発症することがあります。
その場合、自覚症状が、ほとんどないといわれる糖尿病網膜症でも、初期の段階で視力が低下します。
糖尿病黄斑症は、視力にとってたいせつな、網膜の中心部分「黄斑部(おうはんぶ)」に障害があらわれます。
網膜の血管が弱ってくると、毛細血管が血圧に負けて、コブのようなものができます(毛細血管瘤)。
そのコブが黄斑部でやぶれると、血液成分がしみだして、黄斑部にむくみができます。これが、ものを見る機能に影響し、視力が低下するのです。
この場合、レーザー光凝固療法などを行ないます。

糖尿病性白内障
「糖尿病性白内障」は、糖尿病が原因で白内障を発症するものです。
たいていの白内障は、「加齢性(老人性)白内障」といって、40代以降になると増えてくる病気です。しかし、若いうちに糖尿病にかかると、早い時期から白内障になることがあります。
糖尿病にかかると、ふつうの人よりも、白内障にかかる確率が2〜4倍、高くなります。また、加齢性の白内障になったあとでも、糖尿病をもっていると、白内障の症状が進行しやすくなります。
白内障を完全に治して、視力を回復させるには白内障の手術しかありません。糖尿病性白内障の場合でも、とうぜん白内障の手術を行ないます。
しかし、糖尿病の人は炎症をおこしやすいため、手術は慎重に行なう必要があります。
血管新生緑内障
血管新生緑内障とは、新しく作られた新生血管が原因で発症する眼病です。「出血緑内障」ともいいます。糖尿病網膜症の末期段階である「増殖網膜症」になると、あらわれてきます。
血管新生緑内障を発症するほどまでに、糖尿病網膜症が進行すると、治療は困難になります。失明する確率も高くなります。

糖尿病網膜症がすすんで、網膜が酸欠状態になってくると、新生血管がつくられはじめます。この新生血管は弱くもろいため、すぐに破れ、出血します。新生血管は、自分をささえる「繊維性の増殖膜」を網膜に張りめぐらします。
新生血管は増殖力が強いため、硝子体(しょうしたい)にも伸びていきます。進行すると、ついには、虹彩や毛様体にまで、触手を伸ばしていきます。
虹彩の新生血管からは、出血することもあります。
新生血管は、虹彩や毛様体でも、網膜と同様に増殖膜をつくります。
これが房水の排出口である隅角をふさぐと、眼圧が上昇することになります。その結果、視神経がおしつぶされて緑内障になるのです。
糖尿病が原因の「血管新生緑内障」は、点眼療法では効き目がありません。そのため、レーザー光凝固療法を行ないます。血管新生緑内障は、通常の緑内障以上に治療がむずかしいといわれています。
角膜の知覚低下
糖尿病にかかると、網膜だけでなく、同時に角膜にも障害があらわれます。
高血糖は血管だけではなく、神経もおかしていきます。
角膜では、痛みを感ずる知覚が、にぶってくるのです。
そのため、コンタクトレンズを装用している人が糖尿病になった場合、要注意です。ちょっとしたことでも、角膜が傷つきやすくなります。
傷も治りにくくなるため、角膜潰瘍(かいよう)に発展する可能性があります。
また、糖尿病になると、最表層の「角膜上皮」と、その下の「ボーマン膜」の結合が弱くなります。そのため、角膜上皮層が簡単にはがれるようになります。
コンタクトレンズをはずすときに、角膜上皮までいっしょに取ってしまった、ということも起こりうるのです。
以上の理由から、糖尿病の人は、コンタクトレンズを装用しないほうがいいかもしれません。
眼筋まひ、眼瞼下垂
糖尿病になると、目を動かす外眼筋に障害が出る「眼筋まひ(麻痺性斜視)」になることがあります。また、まぶたが下がってくる「眼瞼下垂(がんけんかすい)」という症状がでてくることがあります。
こういった症状がおきるのは、糖尿病によって、脳の血管に影響が出るためです。そのため、まぶたや目を動かす神経に障害が出てくるのです。
「眼筋まひ」になると、ものが二重に見えたりします。
これを「複視」といいます。片目で二重に見える白内障や乱視とは違います。
複視は、外眼筋がうまくはたらかなくなるために、両方の目を一点に向けられなくなる状態。つまり、焦点を合わせられなくなるのです。
その結果、両眼視機能がそこなわれ、立体感、遠近感をもった見かたができなくなります。
こういった症状は、深刻なものではなく、内科的な血糖コントロールによって、自然と治ることがあります。
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