ハードコンタクトレンズ
ハードコンタクトレンズは、硬い素材でつくられています。
ソフトレンズよりも、目にやさしいレンズです。
ここでは、酸素透過性のあるハードコンタクトレンズについて解説。

ハードコンタクトレンズと、素材のかたさ
ハードコンタクトレンズには、多くの長所があります。
まず、「素材がかたい」ということが、多くのメリットをもたらします。
ハードレンズは素材がかたいため、光学的に安定しています。
いっぽうソフトコンタクトレンズは、簡単な圧力で変形。素材がやわらかいため、目の形によって影響をうけるのです。
ハードコンタクトレンズは、目の形にかかわりなく、きれいな屈曲面を維持することができます。このため、屈折異常の矯正効果にすぐれています。
強度の近視にも対応できるわけです。
素材がかたいため、不正乱視や円錐角膜といった「角膜の症状」の矯正に、力を発揮します。

不正乱視とは、角膜上に不規則な凹凸がある乱視。
円錐角膜とは、角膜の中央部がとがってくる病気です。
かたい素材のハードコンタクトレンズなら、こういった角膜の形状を、ある程度、補正することができるわけです。
角膜はやわらかいため、変形させることができるのです。
ちなみに、ハードコンタクトレンズによる角膜の変形にヒントを得て、「オルソケラトロジー」が開発されました。
オルソケラトロジーとは、寝ているあいだにハードレンズを装用。
そのあいだに角膜を変形させ、視力を回復させる方法です。
日中はレンズをはずして、裸眼ですごすことができます。
ハードコンタクトレンズをはずしたあと、レンズのあとが角膜に残り、屈折力が変化。角膜がもとの形にもどるまでのあいだ、一時的に視力がアップする現象がおきるのです。
ハードコンタクトレンズと、そのほかの長所
ハードコンタクトレンズは、ソフトレンズにくらべて酸素透過性が高くなっています。また、まばたきのたびにレンズが上下に動くため、涙の交換率が高くなっています。
このふたつの特徴によって、ハードレンズはソフトレンズよりも、角膜に酸素が行きわたります。
そのほかハードコンタクトレンズは、目の異常に気づきやすくなっています。
いっぽう、ソフトレンズは水分をふくみ、やわらかい素材。そのため、装用感がよくなっています。それがかえって、目の異常を気づきにくくすることに。
ハードコンタクトレンズには、装用感がわるいという特徴があります。
しかし、このことは、ちょっとした目の異常を感知できるセンサーともなるわけです。
ハードコンタクトレンズと含水率
ハードコンタクトレンズは、水分をほとんどふくみません。
いっぽうソフトレンズは、素材がやわらかく、水分をふくんでいます。
それによって、角膜への酸素供給の経路を確保しているわけです。
しかしそのために、レンズ内部に細菌が繁殖しやすくなることに。涙のタンパク成分も入り込んだり、付着しがちです。
ハードコンタクトレンズは、素材がほとんど水分をふくまないため、ソフトレンズほど汚れません。ただしソフトレンズとくらべて、汚れが少ないという程度。ハードレンズも構造上、よごれやすいレンズなのです。
ハードコンタクトレンズがほとんど水分をふくまないということは、乾燥に強いということ。
ソフトコンタクトレンズは、レンズが乾燥すると、涙を吸い上げてしまい、目がかわきがちになります。
しかしハードコンタクトレンズには、そのようなことはありません。
ソフトレンズよりもハードレンズのほうが、ドライアイの人でも装着しやすいといえます。
ハードコンタクトレンズの短所
ハードコンタクトレンズの短所は、非常に少なくなっています。
まずハードレンズは、つけ始めは異物感を強く感じるものです。
しかし、練習していると慣れてきて、快適に装用できるようになります。
異物感が強いということは、目の異常を早期発見できるというメリットに。
ハードコンタクトレンズでは、目の傷が重症化して、角膜潰瘍(かいよう)になるということは少ないのです。
ハードコンタクトレンズには、目から外れやすいという欠点もあります。
角膜よりも小さいからです。そのため、レンズは目に固定されていません。
まばたきをするたびに、レンズは上下に動くことに。
ハードコンタクトレンズは角膜のうえに、ただのっているだけなので、脱落しやすいのです。そのため、はげしいスポーツには向いていないといえます。
しかし、このことは裏をかえせば、長所にも。
レンズの下にある涙は、ソフトレンズよりも交換しやすくなります。
ハードコンタクトレンズと充血
ハードコンタクトレンズを装用すると、充血が目立つことがあります。
これは、酸素不足による充血ではありません。
ハードレンズでは、酸素不足はそれほど心配ありません。
ハードコンタクトレンズは、まばたきのたびに、レンズが上下動します。
そのたびに周囲の涙を、表面張力で吸い上げてしまうことに。

涙が吸い上げられるのは、たいてい角膜の真よこの「結膜」です。
結膜とは、白目の部分。
3時と9時の方向の結膜部分がかわくため、ここに細かい傷ができます。
そのため、白目が充血するのです。
これは、ハードコンタクトレンズ装用者の3割ほどにみられる現象。
これを「3-9ステイニング」といいます。
ハードコンタクトレンズの強度
ハードコンタクトレンズには、強度が弱いという欠点があります。
もともとハードレンズはうすいため、これだけでも割れやすいもの。
そのうえ、レンズに酸素透過性をもたせるために、分子どうしの間隔が広くなっています。
どうしても、素材がもろくなってしまうわけです。
ハードコンタクトレンズは、取り扱いに注意しなければなりません。
ハードレンズを装用したまま、はげしい運動を行なうと、はずれてしまう可能性があります。
ハードレンズが落ちると、その衝撃で破損してしまう危険があるのです。
ハードコンタクトレンズと涙の交換
ハードコンタクトレンズは、ソフトレンズよりも、効率よく涙の交換を行なえるようになっています。

まばたきをして目をあけたとき、ハードレンズは、まぶたといっしょに、いったん上に持ち上げられます。そのあと重力で、やや下がってきます。
このときレンズ下の古い涙は、新しい涙と交換。
ハードコンタクトレンズでおおわれていない角膜の部分は直接、大気中から酸素を取り込めます。イラストでいうと、ちょうど茶色の部分。
そのため、ソフトレンズほど酸素不足にならないわけです。
しかし、ハードレンズ下の中央部の涙は、どうしても残りがちに。
涙の交換率は、裸眼を100%とすると、ハードレンズでは20%。ソフトレンズにいたっては、涙の交換率は、裸眼の2%ほどです。
コンタクトレンズが、いかに角膜に負担をかけているかがわかる数値です。
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