フェイキックIOL
フェイキックIOLとは
フェイキックIOLはメディアでは、「永久コンタクトレンズ」とよばれています。
日本語に訳すと、「有水晶体眼内レンズ」となります。

つまりフェイキックIOLとは、水晶体を温存したまま、人工の眼内レンズを入れる視力回復手術。
フェイキックIOLは、白内障手術の応用として開発されました。
白内障手術では、白くにごった水晶体を取り出します。そのかわりになるものとして、人工の眼内レンズを挿入。
しかし、フェイキックIOLの手術では、まだ透明性をたもっている水晶体は温存し、そのまま残します。そのうえで、人工のレンズを入れるわけです。
現在、近視だけでなく、乱視用の眼内レンズも開発されるようになりました。そのため近視と同時に、乱視も矯正できるようになっています。

フェイキックIOLと強度の近視
フェイキックIOLは、最強度の近視でも矯正することが可能です。
たとえば視力0.01でも、フェイキックIOLの手術を行なうことで、1.2にまで視力を回復させることができるのです。
エキシマレーザーで角膜をけずるレーシック手術では、0.01の近視を、ここまで視力回復させることはできません。
なぜなら、レーザーでけずれる角膜の厚さには限りがあるからです。
レーシック手術で矯正できる視力は、−10.0Dまでといわれています。
これ以上の強度の近視を矯正しようとすると、角膜をより深くけずらなければなりません。そうなると角膜の強度が弱くなり、乱視が出現する危険が。
フェイキックIOLの手術では、もちろん角膜はけずりません。
人工のレンズを、目のなかに入れるだけです。そのため、−20.0Dというような最強度の近視でも視力回復できるのです。
さらにフェイキックIOLは、角膜がうすいために、レーシックが不適応になった人にも向いています。
これからは、中程度の近視まではレーシック手術。
最強度の近視はフェイキックIOL、という流れになっていくでしょう。
フェイキックIOLの手術
フェイキックIOLの手術では、麻酔をしたあと、角膜のわきを3ミリほど切開します。以前は、レンズをそのままの形で入れていたので、6ミリほど切開していました。そのため、縫合(ほうごう)が必要でした。
しかし現在のフェイキックIOLの手術では、レンズがやわらかく、折りたためるようになっています。そのため、3ミリほどの切り口でよくなったのです。
自然にくっつくため、縫う必要はありません。
フェイキックIOLで使うレンズの素材は、人体にやさしい樹脂素材です。
近視の度合いによって、レンズの形はさまざま。直径は6ミリ、厚さは1ミリ程度です。

フェイキックIOLの手術では、目を切開したあと、眼内レンズを「前房」に入れます。前房とは、角膜と虹彩(こうさい)の間のこと。
カニの爪のような固定具で、虹彩に眼内レンズを固定します。
これで動くことはありません。眼圧を正常にたもつため、虹彩に穴をあけておきます。
虹彩への固定には、高い技術が必要です。
ここが執刀医の腕の見せどころ。ただし、この固定によって手術後、虹彩炎がおきる可能性があります。
以上で、フェイキックIOLの手術は終了です。
麻酔の時間もふくめて、一回の手術時間は15分〜30分程度。
レーシック手術と同じくらいの時間です。あとは、切り口が自然につながるのを待つだけです。
フェイキックIOLの手術はレーシックと同様、入院の必要はありません。
日帰りすることができます。ただし、しばらくはよく見えないため、間隔をあけて、もう片ほうの目の手術を行ないます。
なお虹彩と水晶体の間に、眼内レンズを固定するという方法もあります。
フェイキックIOLのメリット
- 前述したように、最強度の近視でも視力回復ができる。
また、角膜がうすくても手術が可能。 - 旧式のレーシック手術よりも、クリアに見えるようになる。
しかし最新のイントラレーシックとは、それほど大差がないと思われる。
今後レーシック手術の精度が上がっていけば、見え方の質はほとんど変わらなくなる。 - レーシック手術のように角膜を削らないため、夜間視力が低下しない。夜間に光がにじんだり、まぶしかったり、暗いところで見づらいといったことがない。ただし、これも旧式のレーシックの場合。
最新のイントラレーシックでは、夜間視力の質はかなり向上している。 - 万が一あわない場合でも、レンズを取り出せば、もとの目の状態にもどせる。いっぽうレーシック手術の場合は、角膜をレーザーでけずるため、もとにはもどせない。
- 入院する必要がない。日帰りできる。これはレーシック手術でも同じ。
- うまれつきの悪性近視の場合でも、フェイキックIOLとレーシック手術を組み合わせれば、視力回復が可能。
- そのほか「フェイキックIOLと角膜内リング」、「フェイキックIOLとラセック」など、いろいろな組み合わせが考えられる。
フェイキックIOLのデメリット
- 眼球にメスを入れるため、それなりの決断が必要。
いっぽうレーシック手術なら、角膜の表面にレーザーを当てるだけなので、気軽にうけられる。 - フェイキックIOLの手術後は、すぐに視力がでない。
いっぽうレーシックでは、手術後(15分〜30分後)、一気に視力回復する。 - フェイキックIOLでは、片目ずつ手術を行なう必要がある。
レーシックは、手術後すぐに視力回復するため、両目同時に手術できる。 - 手術後、角膜内皮細胞(*注)が約1.2パーセント減少する。
これは白内障手術でも同じこと。コンタクトレンズを長年使ってきた人は、角膜内皮細胞が少ない傾向にあり、不適応となることがある。 - 眼球を切り開くため手術後、乱視が出現することがある。
- 虹彩炎になることがある。虹彩(こうさい)にレンズを固定するため。
- フェイキックIOLは、片目で40〜50万円もかかる。
ただし普及していけば、徐々に価格はさがっていく。保険は適用されない。
いっぽうレーシックは、両目で20〜30万円程度。 - フェイキックIOLの手術後に、合併症を起こさないで済むかどうかは、すべてが執刀医の腕前にかかっている。
いっぽう、レーシックでは医師の腕よりも、どれだけ最新の機器を導入しているかという点がポイント。
注): 角膜内皮細胞とは?
角膜内皮細胞は、いったん死滅すると、二度と再生されない貴重な細胞。あまりに多く減少すると、眼球内の水分が一気に入ってくる。その結果、角膜がふやけて白くにごり、視力が低下。角膜移植が必要になる。
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