屈折と調節
眼の屈折と調節
角膜から光が取り込まれると、意識しなくても、目は自動的に「屈折と調節」を行ないます。この機能によって、わたしたちは、外界のあらゆる変化にすばやく対応し、ものを正確にとらえることができるのです。
眼の「屈折」とは、外界からの光を曲げるはたらきです。
これによって、小さな面積の網膜におさまるように、光を縮小するのです。
屈折は、角膜と水晶体というレンズで、2回行なわれます。
眼の「調節」とは、水晶体の厚みを変えることによって、遠くや近くに焦点をあわせる遠近調節のことです。
遠近調節のさいは、水晶体の調節だけではなく、眼球も動きます。
近くを見るときは、眼球を内側に寄せる「輻輳(ふくそう)」がともないます。
近くを見るときは、誰でも「寄り目」になるので、わかるでしょう。
また遠くを見るときは、眼球を耳側に開いていく「開散」をともないます。
調節には、遠近調節のほか、「明暗の調節」もあります。
光が多いときは、瞳孔(どうこう)を小さく調節。反対に光が少ないときは、瞳孔を広げます。瞳孔は光をとおす穴。瞳孔のまわりにある虹彩(こうさい)という筋肉で、この穴の大きさを調節しています。
屈折と調節の連携プレー
屈折と調節は、別々のものではありません。
つねに一体となって、連携プレーではたらいています。
@ 角膜による屈折
外界の物体から反射してきた光は、まず角膜というレンズを通るときに屈折します。角膜は凸レンズのため、イラストのように内側に屈折。
このとき、全屈折の約7割を完了します。
A 虹彩による明暗の調節
角膜で大きく屈折した光は、つぎに瞳孔(どうこう)を通過していきます。
瞳孔の大きさは、虹彩(こうさい)という筋肉が調節しています。
光の量が多い明るい場所では、瞳孔が小さくなります。
眼球内へ入る光の量を少なくするためです。こうすることによって、まぶしさがやわらぐのです。
反対に、光の量が不足している薄暗い場所では、瞳孔が大きくなります。
眼球内に、できるだけ多くの光を取り込むためです。
このようにして虹彩筋は、眼に入る光の量を調節しています。
B 水晶体による屈折と調節
瞳孔(どうこう)を通過した光は、さいごに水晶体をとおります。
このとき、のこり3割の屈折が行なわれます。角膜で一度屈折しているので、二度目の屈折になります。
角膜が「固定レンズ」だとすると、水晶体は「可変レンズ」。
角膜では、どの距離のものを見る場合でも、屈折力は同じです。
しかし水晶体では、見る対象の距離に応じて、屈折力を変えます。
水晶体は、最終的に遠近の微調整を行なうところなのです。
遠いところに焦点を合わせようとすると、水晶体がうすくなります。
反対に、近いところに焦点を合わせようとすると、水晶体があつくなります。
この微調整によって、どのような距離のものでも、網膜上に焦点をむすぶことができるわけです。
以上のべてきたことは、眼がいい「正視」の人の場合。
近視や遠視があると、見る対象の距離によっては、網膜に焦点をむすべなくなります。そのため、ぼやけて見えるわけです。
老眼は水晶体が硬くなるため、水晶体を厚くする調節が困難になります。
近視や遠視、乱視を「屈折異常」、老眼を「調節異常」といいます。
水晶体での遠近調節
水晶体は、厚みをかえることによって、遠近調節を行なっています。
しかし水晶体の力だけで、遠近調節を行なうことはできません。
水晶体だけでは、ただのレンズ。このレンズを変形させるエンジンと、力をつたえる綱が必要です。エンジンにあたるものが「毛様体」という筋肉。
その力をつたえる綱であり、ロープが「チン小帯」です。
遠くを見るとき、水晶体がうすくなるのは、毛様体筋がゆるむためです。
すると、毛様体筋の大きさが小さくなります。このとき、今までたるんでいたチン小帯が”ピン”と張ります。そして、水晶体を横から引っ張るのです。
ところで、水晶体は「嚢(のう)」という袋に入っています。
チン小帯は、この袋に付いています。この袋を横から引っ張ると、水晶体の前後に力がかかります。水晶体に、前後から押しつぶすような圧力がかかるのです。このため、水晶体はうすくなります。
近くを見るとき、水晶体があつくなるのは、毛様体筋が緊張するためです。
すると毛様体筋が盛り上がり、大きくなります。同時に、今まで”ピン”と張っていたチン小帯がたるみます。
このとき水晶体は、まわりの干渉から開放されて、自由になります。
すると、水晶体自身がもつ弾力性によって、自然に厚くなるのです。つまり水晶体が厚くなるということは、本来の水晶体の形にもどるということです。
上のイラストは、頭上から見た眼球の断面図です。そのためチン小帯は、水晶体の横にだけ付いているように見えます
しかし実際は、チン小帯は、水晶体のまわり360度をぐるりと取り囲んでいるのです。
遠近調節の実際
実際の遠近調節では、水晶体だけでなく、外眼筋も協力してはたらきます。外眼筋の運動はふたつあります。寄り眼になる「輻輳(ふくそう)」と、その反対に目が開く「開散」です。
そのほかベイツ説によれば、外眼筋が眼球を変形させることによって、遠近調節を行なっているとしています。
屈折異常のしくみ
屈折異常とは、屈折が正しく行なわれない状態をいいます。
近視、遠視、乱視のことです。
原因はふたつあります。
- 角膜と水晶体の屈折力が強い、あるいは弱い
- 眼球の長さ(眼軸)が長い、あるいは短い
近視は、レンズの役割をはたす角膜と水晶体の凸が、通常より強くなっています。そのため、屈折力が強くなり、遠くを見たときに網膜の手前で焦点がむすばれてしまいます。その結果、ぼやけて見えるのです。
しかし、これは初期の「屈折性近視」。
たいていの近視は「軸性近視」です。眼球の長さ(眼軸)が長いために、焦点が網膜にとどかないのです。
遠視は近視の反対で、角膜と水晶体の凸が、通常より弱くなっています。
そのため、屈折力が弱くなり、網膜を通り越してしたところで焦点がむすばれてしまいます。その結果、遠くも近くもぼやけて見えるのです。
また「軸性遠視」では、眼軸が短いため、網膜で焦点が結ばれなくなります。
乱視の眼は、表面の角膜がゆがんでいます。
そのため、角膜の場所によって、光の進行方向がまちまちになります。
そうなると、網膜上にむすばれる焦点が複数に。その結果、ものがダブって見えるのです。乱視は、水晶体のゆがみで発生することもあります。
