角膜移植
角膜移植とは
角膜移植とは、白くにごったり変形した角膜を切り取り、提供された角膜を移植することです。
角膜は、提供者(ドナー)の生前の意思、あるいは、遺族の意思によって提供されます。ドナーの死後、献眼された眼球は、後述する「アイバンク」を介して、すみやかに、レシピエント(移植をうける人)のもとに届けられます。
透明な角膜から入ってきた光は、房水、水晶体、硝子体(しょうしたい)をへて、網膜にとどきます。ところが、角膜が白くにごっていると、そこから先に、鮮明な光が進まなくなってしまいます。こうなると視力が低下します。
また、角膜の形がゆがむと、強い乱視を引き起こします。
角膜移植によって、損傷をうけた角膜は、正常な角膜と入れ替わります。
ただし、水晶体や網膜に疾患がある場合は、視力回復できません。
角膜は、肝臓や腎臓、心臓、骨髄とくらべて、「拒絶反応」の少ない臓器。
また、角膜移植の成功率は90パーセントといわれています。
角膜移植は、レシピエントにたいして、ドナーの数が少ない現状にあります。そのため角膜移植手術は、すぐにうけられず、1〜2年は待たなければなりません。海外のアイバンクから、眼球を取り寄せることもあります。
角膜と拒絶反応
角膜は、ほかの臓器にくらべ、拒絶反応の少ない組織です。
その理由は、角膜の構造にあります。まず、角膜には血管がとおっていません。さらに、繊維質が、網の目のように張りめぐらされています。
たんぱく質の細胞成分が少ないのです。
角膜に酸素が不足すると、本来、透明な角膜に血管が進入してきます。
コンタクトレンズの長期装用などが原因です。こういったケースでは、角膜に拒絶反応がおきやすくなります。
角膜移植の拒絶反応は、「免疫抑制薬」などを使うことによって、発症率を15パーセント程度まで下げることが可能です。
角膜の拒絶反応は、手術後3〜6ヶ月たってから起きることが多いようです。まれに手術後1年たってから、拒絶反応がおきることもあります。
角膜移植にともなう拒絶反応としては、ぼやけて見える、目の充血、目の軽い痛み、ゴロゴロするなどがあります。
たとえ拒絶反応がおきたとしても、すぐに診察をうければ大丈夫です。
免疫抑制薬によって、拒絶反応をおさえ、改善することが可能です。
角膜移植が必要な眼病
角膜移植は、角膜に病気や損傷があった場合に行ないます。
角膜移植の適応となるものには、以下のようなものがあります。
- ■【角膜白斑(はくはん)】
- 細菌やウィルスによって、角膜が白くにごるものです。
細菌性角膜炎、角膜真菌症、アカントアメーバ角膜炎、角膜ヘルペスなどによって引き起こされます。
ウィルスが死滅しても、白いあとが残ることがあります。 - ■ 【遺伝性もの】
- 角膜変性症、角膜ジストロフィーなど。
角膜に異常な物質ができて、にごります。 - ■ 【水泡性角膜症】
- 角膜内皮細胞が極度に減少すると、眼球内の房水が浸入してきて、角膜がにごります。コンタクトレンズの長期装用、白内障の手術、緑内障のレーザー虹彩切開術、近視手術のフェイキックIOLなどで、内皮細胞は減少します。
- ■【円錐角膜】
- 角膜の中央部がうすくなるために、中央部が円錐状に突き出てくる症状。
角膜の形状異常のため、乱視を引き起こします。ハードコンタクトレンズによって矯正できる場合があります。重度の場合、角膜移植が必要になります。 - ■【外傷】
- 薬物、やけど、目の傷などによる事故によって、角膜が損傷するものです。コンタクトレンズの間違った装用によって、角膜の表面が荒れる「角膜上皮びらん」を引き起こします。それが進行すると、「角膜浸潤」「角膜潰瘍(かいよう)」を引き起こし、角膜が白くにごることがあります。
角膜移植の手術
角膜移植の手術は、2つに大別されます。
ひとつは、「全層角膜移植術」。
5層構造になっている角膜のすべての層を、交換する手術法です。
もうひとつは、「深層表層角膜移植術」。
内側の2層だけを残し、表面の3層だけを交換する手術法です。
後者の「深層表層角膜移植術」のほうは、自分の角膜内皮細胞をのこすため、拒絶反応が少なくなります。
全層角膜移植術では、他人の角膜内皮細胞と交換するため、長期的に見ると、だんだんと内皮細胞が死滅していきます。
そのため、再度、角膜移植が必要になる可能性が高くなります。
角膜移植を行なうと、通常の半分程度の角膜強度になります。
そのため、目をいたわって生活していく必要があります。
角膜移植後の注意点
角膜移植のあとは、合併症などが起きる危険があるため、注意が必要です。「定期的な通院」と「目薬の点眼」を欠かさないことがたいせつ。
- 角膜移植後は、目の屈折率が変わります。
角膜の曲率が変化するからです。そのため、今まで装用していたメガネやコンタクトレンズは、使えなくなります。
視力が安定する数ヵ月後に、再検査を行ない、作り直す必要があります。 - 乱視が出現することがあります。
この場合は、抜糸を行なったり、糸の強さを調節します。
それでも、乱視がのこってしまうことがあります。 - 炎症がおきることがあります。
眼内炎など。そのため、つねに清潔にする必要があります。 - 拒絶反応がおきることがあります。
急激な視力低下や充血、軽い痛みなど。この場合は、すぐに診察をうけ、免疫抑制薬によっておさえます。まれに副作用が起きます。 - 眼圧が上昇して、緑内障になることがあります。
手術前から緑内障のある人は、要注意。 - 正常な角膜の、半分程度の強度に低下します。
とくに手術直後は、もっとも角膜の強度が弱い時期なので、要注意。
打撲などによって、角膜を損傷すると、再入院が必要な場合があります。
アイバンクとは
アイバンクとは、厚生労働大臣の許可をうけて運営されている「眼球あっせん業」です。角膜移植をうけたい人と、提供したい人を仲介する機関です。
アイバンクは、非営利団体で、寄付によって運営されています。
全国の各都道府県に設置されています。
基本的に、本人が生前に、アイバンクに連絡して登録を行ないます。
すると登録証が発行され、これが提供する意思があるとの証明になります。
ただし、本人(ドナー)の死後、家族が”献眼”を拒否した場合は、提供できません。また、生前、本人が登録していなくても、家族の意思によって、献眼することができます。提供の成否は、遺族がにぎっているわけです。
注意する点は、生前、登録証を取得していても、まわりの家族が知らない場合、だれもアイバンクに連絡できない、ということ。
眼球は、死後、6〜10時間のうちに摘出されることが望ましいとされます。
自分の意思を、ふだんから家族に伝えて、話し合っておくことが大切です。
アイバンクは提供の連絡をうけると、すぐに担当者が現地に向かいます。
摘出後は、「義眼」をはめるため、摘出したことがわかりません。
提供される眼球に、異常や感染がないことを検査した上で、移植をうける人のもとに届けられます。2日以内に、移植手術が行なわれます。
なお、提供者が近視や老眼、あるいは、網膜の病気をもっていたとしても、角膜は提供できます。現在、提供される角膜の数が、少ない現状にあります。そのため、約40パーセントの角膜は、アメリカなどから輸入されています。
